「ヘルシスト」は、株式會社ヤクルト本社が発行する健康情報誌（1976年創刊）です。
「健康」「生命科學」「先端研究」をキーワードに、最新の研究や、健康に関する話題?気になる情報などを正確に、そしてわかりやすくお伝えします。

2020年3月10日発行
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- 「生きることには、常に、どんな狀況でも、意味がある」 -
フロイト、アドラーと並ぶ著名なオーストリアの心理學者であり、精神科醫でもあったヴィクトール?フランクル（1905～1997年）は、第二次世界大戦中、ナチスによって強制収容所に送られるという悲劇を経験しました。その體験記『夜と霧』には、心理學者の目を通して見た極限狀態に置かれた人間の様子、そしてそこで生き続けるために必要な考え方への考察が記され、いまなお世界中で読み継がれ、私たちを勵ましてくれます。
フランクルは、醫學者として學んだ教科書が噓だったと思えるほど、栄養、衛生ほか劣悪な環境にも人間は慣れるものだということに驚き、他方自らの未來を信じられなくなった、つまり希望を失うことの肉體に及ぼす影響が、いかに致命的であるかを実感します。
そして、人は未來を見據えて初めて、現在とその苦しみに超然としていることができるという考察を深め、生きる目的を事あるごとに意識させるといった精神的ケアが、収容所の限られた條件の中で行われたのでした。
収容所で両親と妻を失ったフランクルは、その後再婚。自ら創始した心理療法で多くの人々を救い、92歳で亡くなりました。「生きていれば、未來には待っている何かがある」とは、フランクルが生きる意味を見失って苦しむ人々に発想の転換を促した言葉ですが、彼の生涯はまさにそれを実証しています。